2011.5.9 こんぴら歌舞伎(その5)鯉つかみ第一場と第二場 [ミニ知識]
私の母の日の記事は又の機会にして、こんぴら歌舞伎の最後の演目について書こうと思います。
鯉つかみとは主人公が水中で鯉の精と闘う様子を主題とする作品一般を指すのですが、
今回は滝窓志賀之助が主人公の鯉つかみです。
この作品は明治9年大阪道頓堀の角座のこけら落としで上演されたのですが、
その時鯉退治の場面で本物の水を使った縁起が大評判を得ました。
でも、金丸座で大量の水は使えないはず、さぁ、どうするのでしょう?
藤娘の後25分間の休憩なのですが、私達の座った仮花道側は15分で席に戻れとのこと。
きっと何かの準備があるのですね。 期待が高まります。
結果は、三つの場面それぞれで金丸座の舞台機構を存分に用いた演出に
ただただ感心するばかり。
益々歌舞伎の魅力にとりつかれてしまいました。
あらすじはいたってシンプルです。(役柄とその様子を色分けしてあります)
(第一場のあらすじ)
釣家の息女・小桜姫が奥女中呉竹達と琵琶湖畔に蛍狩りやって来ますが、
姫の前に美しい稚児が現れます。
この稚児は姫がかねて一目で恋をした滝窓志賀之助で、
夢の様な再会に姫は喜びに震えます。
演出効果の説明の手助けになると思いますので、舞台機構の説明写真を先に載せますね。
(パンフレットをスキャンしたので、見難いですがお許しください)
①明かり窓 ③花道 ④すっぽん(花道の七三の位置にある切穴)
⑤空井戸 ⑥セリ ⑦盆 ⑩仮花道
尚、写真には見えませんが、花道の上の天井近くに②かけすじ、
枡席の上の天井部分に⑨ブドウ棚があります。
他に⑧場吊り提灯が舞台近くのブドウ棚から吊り下げられています。
第一場の演出(この色の部分が演出効果です)
舞台となる琵琶湖畔の水辺の草むらには黄緑色の蛍の光が飛び交って幻想的・・・
と思う間もなく、⑩仮花道に奥女中の呉竹や腰元達を従えて小桜姫が登場。
途中で立ち止まり、くるりと一回りして顔や衣装を観客全員に見せてくれます。
その華やかさに、拍手が沸き起こりました。
蛍を追ううちに小桜姫が急に胸の痛みを訴えた時、花道の上を一匹の鯉が近づいて来ます。
その鯉が④すっぽんに消えたと思った途端、代わりに稚児(染五郎)が現れます。
早替わりですね。
志賀之助との再会を喜ぶ姫と呉竹、その時志賀之助が一瞬険しい表情に・・・。
姫と呉竹は眠らされたようにその場に伏せてしまいます。
舞台が暗くなったと思うと、黒地に「心」と白抜きで書かれた幕が下がっていました。
黒地に「心」の白抜きはこれが夢であることを示しています。
金丸座の空間が暗闇に包まれた中、客席の頭上あちこちに蛍の光がゆらゆらと。
客席は静まり返り、全員が蛍の光に見とれていました。
この蛍の演出は金丸座ならでは、⑨ブドウ棚があればこそです。
これがブドウ棚です。(画像は歌舞伎美人より)
この天井に上がっていた方裏方さん達が棚の隙間からLED仕様の蛍火を浮遊させていたのです。
(第二場のあらすじ)
釣家の下館で、うたた寝から目覚めた姫は、先程の恋人との再会が夢だったと知り落胆。
そこへ志賀之助が現れ、姫は大喜び。
奥女中の呉竹は二人に奥座敷で時を過ごすようにすすめます。
そこへ信田家使者刑部が訪れ、姫を輿入れさせろと釣家家老篠村に申し入れます。
家老は輿入れを断る代わりに家宝の名刀竜神丸を関白に献上すればいいと主張。
ところが、この名刀は紛失した事になっていた為、刑部は刀を見せるようにと迫ります。
篠村が名刀を抜くと、奥座敷に姫と大きな鯉の影が映り、刑部が不義だと騒ぎたてます。
篠村はやむを得ず刑部を切り捨てます。
そこへ呉竹に連れられて姫と志賀之助がやってきます。
篠村は男の名前を不審に思い、正体を現すように詰め寄ります。
志賀之助の正体は、釣家の先祖に恨みを持つ琵琶湖に住む鯉の精だったのです。
釣家を滅亡させようと企んでいたのです。
その時1本の矢が飛んで来て、鯉に命中します。
矢を放ったのは「本物の志賀之助」でした。
本物の滝窓志賀之助は大鯉を退治しに琵琶湖へと出かけて行きます。
第二場の演出
ここでの見せ場は稚児→鯉→本物の滝窓志賀之助の早変わりをどう盛り上げるか?です。
正体がばれた稚児は⑤空井戸へ飛び込みます。
これが空井戸です。90cm四方の箱で、奈落に通じています。
上方の芝居小屋にある独特なものなのですが、現存するのは金丸座だけなのです。
画像は歌舞伎美人より
飛び込んだと思ったら、今度は④すっぽんから煙に包まれながら大鯉の姿を現します。
すっぽんは、空井戸よりもっと手前の花道に穴が開くようになっているところです。
あっという間ですのに、大鯉役の染五郎は全身鯉のうろこの衣装に包まれていました。
見事な早替わりに、皆拍手喝采です。
と見る間に身体が宙に浮いて行きました。②かけすじのなせる技です。
写真の矢印部分の横棒がかけすじです。花道の真上近くに設置されている宙乗り装置です。
画像は歌舞伎美人より
花道の上を鳥屋(とや)の方まで行き、今度はUターン、と思うと
七三の位置(すっぽんの上)で身体がぐるんぐるんと後方連続回転の大技。
染五郎丈の宙乗りも見事でした。
突然どこからか1本の矢が飛んで来て、大鯉の胸に。
矢で射られた後は苦しみながら頭を下に逆さ宙吊りになり、
ドリルがねじ込まれていくようにぐるぐる廻りながら④すっぽんに消えて行きました。
と思ったら、もう志賀之助に早替わりして、下手外の廊下を足音を立てて走っていきます。
この走る姿を客席後ろの障子を片側ずつ開けて見せてくれるのです。
下手を走り終わったはずが次の瞬間、上手の⑩仮花道に登場して舞台へと進みました。
これからいよいよ大鯉退治に出発です。
長くなりますので今日はここまで。 第三場は次回に致しましょう。
49日の法要です。
うちは浄土真宗大谷派です。
カカの実家は神道です。
by Baldhead1010 (2011-05-09 05:16)
昨日、母には万歩計をあげました。
by kuni (2011-05-09 07:55)
おはようございます
僕はオフ会で遊んでいたので、お花を贈りました
by はくちゃん (2011-05-09 09:44)
こんにちは。
いろいろな装置、宙乗り、早変わり・・・歌舞伎の見せ場をご説明で想像しながら楽しませていただきました。
孝行したくとも親はなく状態ですが、女房は娘に温泉へ招待されて嬉々として出かけていきました。。。わたしをほっといて(笑)
by あら!みてたのね (2011-05-09 18:27)
解説ありがとうございます。
そんな風になってるのですねー。
いろいろ知ると楽しめそうです。
by ChatBleu (2011-05-09 19:00)
楽しそう。見てみたいです(^▽^)
しばらくは緊張した日々のお仕事になります(ー。ー)フゥ
by green_blue_sky (2011-05-09 23:00)
面白そうです。
私は母の日には何もしませんでした。
by いいだや (2011-05-09 23:18)
母の日、いつも通りに
感謝を祈りました。^^*
by こうちゃん (2011-05-09 23:44)
めずらしい装置(仕掛け)ばかりですね。
たいへん興味深いです。
by Loby (2011-05-10 00:24)
こういう舞台の工夫は、本当に面白いものですね。
by アヨアン・イゴカー (2011-05-10 00:29)
亡き母にカーネションと一緒に思いをはせました。
by ナビパ (2011-05-10 17:24)
私の家の住んでいる区には、古典芸能のお仕事の方が結構住んでいらっしゃる。
特に歌舞伎、好きです♪
ホントに近くに有名な歌舞伎一家が住んでいるので、
すごく親しみを感じるんです。
by ぴーすけ君 (2011-05-10 20:31)
PS
緊張で早期覚醒の日々です(;^_^A アセアセ・・・
牛乳はたくさん、売っています。肌寒いといいのですが暑すぎて冷たいものがおいしい~
by green_blue_sky (2011-05-10 20:36)
ちとご無沙汰しておりました。
「奈落の底」はこの奈落から来てるらしいですね。
by 雅 (2011-05-10 22:01)
どうも私のブログへの訪問そしてniceをいただき,温かい励ましのコメントをいただき本当にありがとうございました。これからも頑張って生きて行こうという気力が湧いてきました。青い鳥というのは私の中学生時代タイガースというグループが歌っていた歌の題名で私の大好きな歌でした。今でも動き辛くなった指でギターを弾きながら青い鳥さんのブログを拝見して青い鳥を歌っていますよ。
by ep-ojin (2011-05-11 10:02)
工夫を凝らされた舞台の様子、私も見てみたくなりました。
by やっぴー (2011-05-11 17:19)
面白そうですね~ 早変わりと大掛かりの小道具?(大道具?)
by OJJ (2011-05-11 19:55)
PS
こちらは雨で肌寒いです(;^_^A アセアセ・・・
by green_blue_sky (2011-05-11 23:34)